京都市での外壁塗装 ― 景観条例を踏まえた塗料選びと色彩計画のポイント
2025/10/23
古都・京都の町並みは、歴史的建造物や寺社仏閣だけでなく、住宅や商業施設の外観ひとつひとつが調和して成り立っています。
そのため京都市では「景観条例」により、建物の形状や色彩、素材、さらには光沢の有無まで細かく基準が定められています。
外壁塗装を行う際にもこの条例は無関係ではありません。
無意識に派手な色を選んでしまうと、景観基準に抵触し、再塗装の指導を受けることもあります。
本記事では、条例の要点とともに、京都市内で塗料を選ぶ際の実践的な注意点を詳しく解説します。
Contents
京都の町並みを守る「景観条例」とは
京都市は2007年に全国で最も厳しいといわれる景観条例を施行しました。
歴史的景観の保全と、現代建築の調和を目的に、建築物の高さ・形態・色彩・素材などに明確なルールを設けています。
特に色彩に関しては「京の景観ガイドライン」「建築デザイン基準」で詳細が定められており、外壁や屋根に使用できる塗料の色味・光沢・彩度にまで基準が設けられています。
この条例の根底にあるのは、“京都らしい控えめな美”。
派手さよりも落ち着き、個性よりも調和を重んじる価値観が、塗装選びにも強く反映されています。
屋根の色は「素材感を活かした落ち着いた色」が原則
条例では屋根材ごとに推奨される色彩が具体的に示されています。
日本瓦・平板瓦
原則「いぶし銀」
伝統的な京都の町並みに最も調和する色味。光沢を抑えた渋い銀灰色が望ましい。
銅板屋根
素材色または緑青色(酸化による経年変化を想定)
経年による自然な風合いの変化を評価する考え方。
その他の金属屋根・スレート屋根
光沢のない濃い灰色または黒が原則。メタリック塗装や明るいカラー屋根は避ける。
京都では「テカテカした屋根」は景観を壊すとされ、
“光沢を抑えた質感”が大前提。遮熱塗料を使う場合も、艶消しタイプを選ぶと安心です。
外壁の色彩
「高彩度は禁止」落ち着いた中低明度を意識
外壁は建物の印象を最も左右する部分。条例では、主要外壁に使用できない色彩を具体的に定めています。
(数値はマンセル表色系による彩度の上限)
外壁に使用可能な色
■R(赤系) 彩度6以下
■YR(黄赤系)彩度6以下
■Y(黄色系) 彩度4以下
GY・G・BG・B・PB・P・RP 彩度2以下
この基準を簡単に言えば、原色・ビビッドカラーは一切不可。
鮮やかな赤・青・緑・黄色などは景観を損なうため使用できません。
白や黒も、素材そのものの自然な色味であれば認められますが、塗装によってツヤの強い仕上げを施す場合は避けるべきです。
条例では「主要な外壁には光沢のない素材を使用すること」と明記されています。
塗料選びの実践ポイント
京都市の景観条例に沿った塗装を行うために、実務上特に重要なのが以下の4点です。
(1)艶消しのマット塗料を選ぶ
「光沢のない仕上げ」が基本方針のため、水性マット塗料や3分艶以下の塗料が安全です。
特に最近は艶を抑えつつ耐候性の高いフッ素・シリコン塗料も増えており、選択肢も広がっています。
(2)中〜低明度・低彩度を意識
明るすぎる白や黄色は浮いて見えます。グレージュ、ベージュ、チャコールグレー、モカなど、やや落ち着いたトーンを選ぶと、京都らしい控えめな美しさに仕上がります。
(3)付帯部の色もトーンを統一
雨樋やシャッター、ベランダ手すりなどの付帯部分も外壁と同系色でまとめると、全体として柔らかく上品な印象になります。特に金属部分は「黒すぎず、光りすぎず」を意識。
(4)周囲との調和を確認する
景観条例の目的は「通り全体の美観の統一」。
隣家や周囲の建物の色を観察し、浮きすぎない色味を選ぶことが重要です。
現地で色見本を確認したり、実際に小面積で試し塗りするのも効果的です。
地域指定エリアでは申請・許可が必要な場合も
京都市では地域ごとに「風致地区」「美観地区」「景観重点地区」などが細かく指定されています。
外壁や屋根の塗り替えも、場合によっては景観法に基づく届出・許可の対象になります。
特に以下のエリアでは注意が必要です。
・東山、祇園、嵐山などの歴史的景観保全区域
・風致地区(植物・自然環境を重視するエリア)
・都市計画法に基づく高度地区
届出が必要かどうかは、京都市都市計画局の景観政策課に相談すれば確認できます。
施工前に確認を行うことで、後のトラブルを防げます。
職人・業者選びのポイント
景観条例を理解している塗装業者を選ぶことも大切です。
外壁の耐久性やコストだけでなく、「景観に調和した色彩提案ができるか」が実力の分かれ目です。
リペインターズでは以下のような対応を行っております。
・条例に基づく色の提案(彩度・光沢を考慮)
・必要に応じた行政相談や届出の代行
・周辺環境に合わせたトーンコーディネート
・試し塗りによる現地確認
京都市内の住宅は、外観そのものが「街の文化財」。
景観を守る意識を共有できる職人と出会うことが、良い塗装の第一歩です。
京都らしい外観を長く保つために
京都の景観条例は「規制」ではなく、「美しい町並みを次世代に残すための約束」です。
塗装を行うときは、次の3つの視点を意識しましょう。
・控えめな色味で落ち着いた印象に
・光沢を抑え自然な質感を活かす
・周囲との調和を最優先に考える
派手さを求めず、自然素材のような温かみを持つ塗装こそ、京都の町にふさわしい外観です。
いぶし銀の屋根に柔らかなベージュの外壁。
漆喰調のマットな仕上げに、黒茶の格子が映える町家風の住宅。
そんな風景が、古都・京都の美しさを支えています。
まとめ
京都市で外壁塗装をする際は、「耐久性」「価格」だけでなく、景観との調和を第一に考えることが求められます。
条例を理解した上で、落ち着いた色・艶消しの質感・周囲との統一感を大切にすることで、住まいも、町並みも、長く美しく保つことができます。
外壁塗装は単なるメンテナンスではなく、「京都の景観の一部をつくる仕事」。
その意識を持つことが、京都に住まう人の誇りといえるでしょう。
京都での塗装の色選びにお困りの際は、リペインターズにご相談ください!